お盆休みも終わり、夏休みも残すところ1週間となりました。宿題は終わったかなあ?
お盆休み直前には日向灘での地震があり、お盆休み中は関東東北地方への台風接近もあり予定されていた旅行や帰省などの変更を余儀なくされた方もおられたことと思いますが、残り1週間の夏休みを存分に楽しんでほしいと思います。
学童期に長引く咳や気管支喘息の悪化原因となるマイコプラズマ感染症。名前は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
7月、8月と肺炎マイコプラズマ感染症のお子さんが数名おられました。本日も肺炎マイコプラズマ感染症のお子さんがおられました。
今日は肺炎マイコプラズマ感染症の特徴と診断方法についてです。
肺炎マイコプラズマ感染症の原因である肺炎マイコプラズマは、ウイルスのように小さく、細胞壁をもたないという特徴を持つ細菌です。飛沫を吸入することで、肺炎マイコプラズマが気道の上皮に付着して、増殖することで感染が成立します。
気道感染としては肺炎、気管支肺炎、気管支炎などを引き起こすことが多いですが、咽頭炎、急性細気管支炎、クループ症候群を引き起こすこともあります。小児科では6歳以降に多く、気管支肺炎の原因の約60%を占めますが、乳幼児での発症は少ないのが特徴です。潜伏期間は2~3週間で、発熱、頭痛などの症状が出た後、3~5日目から咳(発症当初は乾いた咳で徐々に痰の絡んだ湿性の咳になります)を伴います。発熱を伴わずぜん鳴や長引く咳のみ認めるケースもあります。発症から2~4週間程度で自然によくなることもありますが、長引く咳の原因や気管支喘息の悪化や発症の因子ともされています。急性期には40%で喘鳴が認められ、また、3年後に肺機能を評価したところ、肺炎マイコプラズマ感染症にかかっていないお子さんと比較して有意に低下していたという報告もあります。
身体所見や血液検査(白血球数やCRP値など)、胸部レントゲンで疾患特異的な所見に乏しいことから、これらの検査で診断することが難しいのが特徴で、肺炎マイコプラズマ感染症を疑うことが必要です。血液検査でマイコプラズマIgMの抗体を検出する方法がありますが、原則として2週間開けて2回抗体の値を調べて、抗体価に4倍以上の上昇があれば肺炎マイコプラズマ感染症と診断可能です。2回採血をしないといけないので、お子さんの負担や迅速性に欠ける(2回目とるときにはすでに治っている)という問題もあります。当院では咽頭拭い検体を用い、感染症の迅速診断装置である「富士ドライケムイムノAG1」にて15分で自動判定し、より精度の高いマイコプラズマ肺炎の診断を実践しています。IMMUNO AG2は、1台でSARSコロナウイルスやインフルエンザウイルス、肺炎マイコプラズマなど複数の抗原に対応できる検査システムで、写真フィルムの銀増幅技術を応用した高感度検出技術により、抗原量の少ない発症初期での検出率が向上するとのことです。開院してから発熱と激しい咳のお子さんで咳の特徴から肺炎マイコプラズマ感染症を疑う患者さんや、咳嗽が長引き聴診上ではぜん鳴を認めない患者さんにこのドライケムを使用し抗原検査をさせていただいております。その結果、発熱+乾性の咳嗽でマイコプラズマを疑った患者さんの8割近くが陽性と出ました。診断には有用と感じています。
肺炎マイコプラズマ感染症の場合、セフェム系やペニシリン系の抗生剤は効果がなく、マクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌薬が有効です。第一選択薬はマクロライド系の抗菌薬になります。予防方法としては流行期には手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行と患者との濃厚な接触を避けることです。学校の登校に関しては明確な基準は設けられていません。
発熱と激しい咳嗽、長引く咳嗽など気になる症状がありましたらご受診ください