食物経口負荷試験 はじめの第一歩 ~いただいたお手紙より~|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

食物経口負荷試験 はじめの第一歩 ~いただいたお手紙より~|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

クリスマスも過ぎ、今年のクリニックの診察も残り2日になりました。

 

71日にこの場所に開業させていただきまして6か月になります。開業以来1300名弱の患者さんにクリニックに足を運んでいただきました。

 

先日受診された方が、過去の検査結果を持ってきて下さり、見ると見覚えのあるお手製のプリントと字。どこにも名前は書いてありませんでしたが、中津病院のプリントで師匠の末廣先生の字であることは一目瞭然でした。1歳の頃に中津病院に通っておられたとのことで、20年の時を経て、お母さまが当院への受診を薦めてくださったとのこと。私はそのころ中津病院の研修医だったと思います。

プリントをコピーさせていただき、末廣先生に、年末のご挨拶に伺った際にお見せしました。プリントを見て、20年前にタイムスリップ。末廣先生と懐かしく当時を思い出しました。保管して下さり、またご持参いただきありがとうございました。

 

 8月以降、食物経口負荷試験を実施し、30名以上の患者さんに負荷試験を受けていただきました。食物アレルギーのお子さんや保護者にとってはアレルギーの食材を食べるというのは不安や恐怖感を感じるものです。小学生まで除去が続くと、保護者の方も食べない生活に慣れ、ご本人も食べなくてもいいやという気持ちになってしまうこともあります。アナフィラキシーを経験したお子さんや保護者にとっては尚更です。食物経口負荷試験は、アレルギー食材を食べて治っているかどうか判断するだけではなく、どの程度なら食べても症状が出ないかを確認したり、微量摂取が可能かどうかを判断したりする検査でもあります。全く食べない状況を続けているより、微量でも摂取して方が、間違って摂取した時に生じうる症状をすこしでも軽くすることができます。アレルギーの食材を食べなくてもよいという患者さんには、間違って食べてしまったときに、アナフィラキシーの危険を少しでも減らすために、微量でも食べることの大切さ、また間違って食べないように食品表示やエピペンの使い方をお伝えさせていただいています。

今回、食物経口負荷試験を受けていただいた患者さんと保護者の方から感想をいただきました。患者さんは小学校5年生のお子さんで、重症の小麦アレルギーがあり、アナフィラキシーの経験もありました。「食べられるようになりたいとは思わない」と当初は負荷試験を受けることに否定的でしたが、「なんでも食べるようになるのはかなり厳しいけれど、微量に含まれているものを食べてアナフィラキシーにならないようには微量摂取を継続することが大切だと」いうお話をさせていただきました。小麦やω5グリアジン(小麦の主要アレルゲン)の数値は高いので、私がアレルギー専門医になったころにはおそらく除去することをお伝えしていたと思います。ただ専門医になって10年以上たち年間100例近くの負荷試験を経験してくると、このような重症なお子さんでも0.1g0.3g程度の微量摂取の負荷試験はできることが分かってきました。ここに達することができたのは、沢山の患者さんのおかげであることは間違えありません。そして小学生以上の患者さんの場合、一番大切なことは本人がやってみるという気持ちになるまで待つことであることも患者さんから学びました(無理に負荷試験しても結局家で続かないことは経験済みです)。このお子さんは自分から負荷試験を受けてみますと前向きな気持ちになってくれました。負荷試験では何をどの程度負荷するかが重要ですが、小麦のアレルギーの場合は、パンよりもうどんの方が負荷食品としては安全です。ご本人の希望も聞いて、0.1gというごく微量のうどんの負荷試験を行いました。結果は陰性で、自宅で0.1gの摂取を3か月続け、次に03gの負荷試験を行いこちらも陰性、現在も自宅で週30.3gの摂取を続けておられます。もちろんエピペンは処方し、症状の出た時に対応に関しては説明をしています。いただいたお手紙を抜粋してご紹介させていただきます。

 

『娘は幼稚園の年長で小麦の誤食をして救急車で運ばれてから5年生まで小麦の完全除去をしていたので、経口負荷試験をする時は勇気がいりました。最初はやりたくないと言っていた娘ですが、先生とお話をしたり、家族で話し合ったりして挑戦することにしました。当日は朝一番から負荷試験をするので、学校も休まないといけませんが、自宅で食べるよりも何かあったらすぐに対応していただける院内で食べた方が、私も娘も安心感がありました。

 負荷試験を受けてからは、娘も小麦を食べているという自信がつき、うれしくて友達にも話をしているようです。娘も家族も挑戦してよかったと思っています。なぜ負荷試験をした方がよいのか?食べ続けることでどんな意味があるのか先生に質問したら、娘にもわかりやすく絵をかいて説明してくださいました。やはりその意味が分かっているのとわかっていないのでは違い、続けていく原動力になります』

 

 負荷試験で自信をつけ、少しでも食べていこうかなあという気持ちになることはご本人や保護者、家族のみならず私やスタッフにとっても嬉しい限りです。

 

来年も引き続き食物経口負荷試験に取り組んでいきたいと思っています。クリニックでの負荷試験ですので重症なお子さんには慎重な負荷試験にならざるを得ませんが、気軽に負荷試験を受けていただけるのがクリニックでの負荷試験の役割かなあと思っています。基本的にはどんな食品でも負荷試験を受け付けていますのでお気軽にご相談ください。安全な負荷試験を行うために、日々スタッフ間で情報共有し、知識向上に努めてまいります。

 

食物アレルギーのお子さんや保護者の方が自信をもって自宅で食べていけるように、私達は伴走者として走り続けたいと思っています。

 

 インフルエンザが猛威を振るっています。体調に気を付けて、どうぞ良いお年をお迎えください。クリニックは16日午前より診療を開始いたします。

 

来年も引き続き『えびしまこどもとアレルギーのクリニック』と『えびくり通信」、そしてインスタのフォローの方もよろしくお願いいたします。

 

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