7月に入り、猛暑の日々。この暑さは異常としか言いようがありません。
今年から吹田市の多くの小学校で恒例の臨海学習が中止になりました。暑さで、十分な練習ができないこと、また現地に行っても暑さで泳げない可能性があることなどを考慮した結果だそうです。吹田市の小学校で6年間を過ごし、臨海学習を経験した私にとっては少し寂しいなあと思いますが、子ども達の安全を考えると、致し方ないですね。暑さが日に日に厳しくなってきます。熱中症を疑うお子さんも受診されておられます。適切な水分や塩分の摂取を心掛けてくださいね。
先日、現在上映中のフロントラインをみました。
2020年2月、豪華客船ダイヤモンド・プリンセスで日本初の新型コロナウイルスの集団感染が発生。未知のウイルスに対して、船内で災害派遣医療チーム[DMAT(ディーマット)]がその対応にあたりました。未知のウイルスに対する不安、周囲の目、家族に対するいわれもない偏見がありながらも、「命」を救うためにあきらめずに戦ったDMATの方々。船の中で起きた出来事を描いたこの映画を見て、DMATの方々の活躍、思いに胸が熱くなりました。詳しく書くとネタバレになってしまいますので、この辺りでとどめておきます。素敵な映画です。お時間ありましたら是非劇場で見ていただきたいなあと一医療人として思います。
今日はアトピー性皮膚炎の新時代、全身治療(今回は生物学的製剤)についてです
アトピー性皮膚炎の治療の3大柱は、抗炎症治療、スキンケア、悪化因子の除去です。抗炎症治療ではステロイド外用薬などの抗炎症外用薬の治療によって湿疹のない皮膚を目指しますが、中等症から重症な患者さんでは外用薬治療だけでは寛解(湿疹のない状態)にもち込めないこともあります。中等症から重症な患者さんで適応になるのが生物学的製剤と内服治療です。
生物学的製剤はアトピー性皮膚炎で起こる炎症やかゆみに関わるサイトカインを抑える薬です。いずれも注射薬で接種の時には痛みを伴いますが、それ以外の接種による大きな副作用がないというのが特徴です。
生物学的製剤
商品名 |
デュピクセント |
ミチーガ |
アドトラーザ |
イブグリース |
作用 |
IL-4,13を抑える |
IL-31を抑える |
IL-13を抑える |
IL-13を抑える |
適応年齢 |
6か月以上 |
6歳以上 |
15歳以上 |
成人と12歳以上で体重40Kg以上 |
デュピクセント:アトピー性皮膚炎の炎症に関わるIL-4.13というサイトカインをブロックします。6か月以上にわたってステロイド外用薬などの抗炎症治療を行っても十分な治療効果が得られなかった患者さんが適応になります。自宅での自己注射も可能です。気管支ぜんそくや慢性副鼻腔炎、結節性痒疹、特発性の慢性じんましんでも使われることがあります。副作用には結膜炎がありますが、小児では成人に比べると起こりにくいです。
ミチーガ:2024年6月から6歳以上の小児に使えるようになりました。アトピー性皮膚炎のかゆみに関与するIL-31をブロックし、アトピー性皮膚炎のかゆみを抑える働きがあります。副作用としてアトピー性皮膚炎の悪化があり、外用薬をきちんと併用する必要があります。
アドトラーザ:アトピー性皮膚炎の炎症に関与するIL-13を選択的でブロックします。従来のステロイド外用薬などによる治療で十分な治療効果が得られなかった患者さんが適応となります。適応年齢は15歳以上ですが、自宅での自己注射できます
イブグリース:アトピー性皮膚炎の炎症に関与するIL-13を選択的でブロックします。最初の3回目までは2週間ごとに投与しますが、その後は患者さんの状態に応じて2週間投与と4週間投与を選択することができます。自宅での自己注射が可能です。
それぞれの生物学的製剤を使用するには年齢以外に皮膚の炎症の程度やかゆみの程度などを評価し適切に使用する必要があります。生物学的製剤はアトピー性皮膚炎に有効な治療ですが高額(小児では子ども医療は適応になります)な治療薬ですので、まずは適切な抗炎症外用薬や保湿剤を使った局所治療を行います。またいずれの生物学的製剤も抗炎症外用薬や保湿剤を併用することが大切です。
小児のアトピー性皮膚炎にも全身治療薬が使用できるようになり、アトピー性皮膚炎治療の選択肢が増えたことは、医療者にとっても、患者さんにとってもありがたいことです。ステロイド外用薬の長期使用による副作用を軽減することも期待でき、外用薬と全身治療薬を併用することでさらに上手にコントロールすることができそうです。
次回は全身治療薬(JAK阻害薬内服)と生物学的製剤とJAK阻害薬の違いについて書こうと思います。