乳アレルギーと離乳食での乳の進め方|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

乳アレルギーと離乳食での乳の進め方|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

 9月に入り朝晩は少し秋の気配を感じるようになってきましたね。ただ日中は暑い日も多く、3か月予報によると9月と10月は平年より気温が高いと予想されていました。そろそろ運動会の練習が始まる学校もあると思います。引き続き熱中症にご注意ください。またCOVID19(ニンバス型)が流行しているというニュースを目にしますね。当院でもちらほらCOVID19の患者様が受診されます。先日、COVID19を疑って検体を取らせていただいたご家族はインフルエンザAが陽性でした。私が医者になったころはインフルエンザの検査を考え始めるのは11月に入ってからでした。夏には検査することはほとんどなかったです。昔から夏でもインフルエンザウイルスがおり、検査していなかったから出なかったのか、世界的なCOVID19感染症流行のち、ウイルスの流行時期がおかしくなったのか定かではありませんが、小児を診ていると感染症に関しての昔の常識は変わってきているように思います。

 

今日は「乳のアレルギーと離乳食での乳の進め方」です。

牛乳アレルギーの多くは、牛乳タンパクの中の「カゼイン」が原因です。カゼインは熱に強く、加熱してもタンパク質の構造はほとんど変化せず、アレルギーの起こしやすさは変わりません。発酵の場合も、カゼインの成分は分解されにくいため、ヨーグルトやチーズなどの加工食品も同じように症状が出ます。

乳のアレルギーは、育児用ミルクを飲み続けていたお子さんに起こることはなく、ほとんどが完全母乳のお子さんです。完全母乳のお子さんが、生後数週から数か月は人工乳を飲んでいたので、大丈夫だろうと思って生後6~7か月頃に育児用ミルクを飲ませると、アレルギー症状が出て、乳のアレルギーに気が付くというパターンが最も多いです。人工乳を少量ずつでも飲み続けることが発症予防につながる可能性があることは以前のえびくり通信でも書かせていただきました。ですので、ミルク栄養のお子さんに関しては乳のアレルギーを心配する必要はありませんので、特に気にせず乳や乳製品を与えていって下さい。完全母乳のお子さんが離乳食で乳を開始する場合、まずは少量のミルクを離乳食で使ってみるのが良いかと思います。育児用ミルク少量で症状が出なければ、与える量を少しずつ増やしていってみてください。完全母乳のお子さんはミルクを嫌がる傾向にあります。もしミルクを嫌がる場合はヨーグルトでもよいと思います。含まれている乳のタンパク質量から考えると牛乳10gが飲めた場合、乳製品では下記の量の摂取が可能です。

普通牛乳

10g

有塩バター

55g

乳酸菌飲料

30g

ヨーグルト(全脂無糖)

9.2g

アイスクリーム(普通脂肪)

8.5g

カッテージチーズ

2.0g

プロセスチーズ

1.5g

脱脂粉乳

1.0g

パルメザンチーズ

0.8g

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チーズや脱脂粉乳は乳のたんぱく量が非常に多く、乳のアレルギーのある子どもでは最後に挑戦する乳製品になります。

乳も卵と同じように小麦と加工されたパンなどは乳そのものを直接摂取するよりも症状は出にくい傾向にあります。ですので、乳の含まれた食パンなどは乳そのものを摂取して症状が出てしまった患者さんでも摂取することができる場合があります。ただ一言に食パンといっても、含まれている乳蛋白の量はメーカによってかなり差があります。どのパンならどのくらいの乳が含まれているかはある程度分かっていますので、ご心配な方は診察時にご相談ください

(パン)➡少量のミルク・ヨーグルト➡ミルク・ヨーグルトの量を増やす➡チーズ・脱脂粉乳

 

乳アレルギーはカルシウム不足に注意が必要

少量のミルクでアレルギー症状が出てしまった場合は、低アレルゲンミルクを使ってみてください。もちろん完全母乳で乳・乳製品をしばらくの期間除去するのも方法ですが、乳の除去で最も問題になるのはカルシウム不足です。牛乳アレルギーの子どものカルシウム摂取量は、牛乳アレルギーではない子どもと比較して半分程度と報告されています。必要なカルシウムを乳製品以外で効率的に十分にとることは難しいため、毎日の食事の組み合わせで日常的に摂取する習慣が大切です。

カルシウムの多い食品には、アレルギー用ミルク、煮干しなどの小魚類や青菜類、海藻、大豆製品などがあります。

 

アレルギー用ミルクとは

アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)は、牛乳タンパク質を加水分解して、分子量を小さくした「加水分解乳」と、アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけた「アミノ酸乳」がある。最大分子量の小さいものほどアレルギー反応を起こしに杭ですが、味は確実に落ちます。ですので、乳のアレルギーがあってアレルギー用ミルクを試す場合は、まず、加水分解乳を試し、それでもアレルギーが出る場合はアミノ酸乳を試します。大豆アレルギーがない場合は、大豆乳を使用しても大丈夫です(ボンラクト®は味も良く比較的飲みやすいと思います)

分類

加水分解乳

アミノ酸乳

調整粉末大豆乳

 

ミルフィーHP

ニューMA-1

エレメンタルフォーミュラ

ボンラクト

最大分子量

3500

1000

445

290

原材料

乳清分解物

カゼイン分解物

精製アミノ酸

分離大豆たんぱく

 

よく間違われるのが「ペプチドミルクE赤ちゃん®(森永乳業)です。ペプチドミルクは、タンパク質の酵素分解が不十分でアレルゲンが残存しており、乳アレルギーのお子さんには使用できません

 

食品表示にご注意ください

加工食品に利用される「乳化剤」「乳酸菌」「乳酸カルシウム」などはその名称から、乳製品と誤解されやすいのですが、牛乳とは関係ありません。一方、「全粉乳」「脱脂粉乳」「練乳」「乳酸菌飲料」「はっ酵乳」などの加工食品には牛乳が含まれるため、牛乳アレルギーの患者さんは食べられません。乳にアレルギーがあるお子さんでも牛肉は摂取可能ですし、非常に重症なお子さんを除いては乳糖の摂取も可能です。しかしヤギ乳や羊乳は牛乳と強い交差抗原性があり、乳アレルギーのお子さんは除去が必要です。

食べても大丈夫なもの

症状が出る可能性があるもの

牛肉

乳化剤

乳酸菌

乳酸カルシウム

乳糖(非常に重症なケースを除く)

ヤギ乳・羊乳

全粉乳

脱脂粉乳

練乳

乳酸菌飲料

はっ酵乳

 

卵、乳、小麦の中で、最も重篤なアレルギー症状が出やすく、治りにくい食品は乳だと考えています。特にアレルギー性鼻炎や気管支喘息などを合併している乳アレルギーのお子さんでは乳を間違って食べた際(誤食といいます)に呼吸器や全身症状などを呈する可能性が高いです。乳のアレルギーに関わらず食物アレルギーのお子さんで喘息やアレルギー性鼻炎がある場合は、そちらの治療も並行して行う必要がありますし、ぜん息やアレルギー性鼻炎の治療を行うことで、呼吸器の症状が出にくくなります。アレルギーはトータルで治療していく必要があります。

 

最後に喘息の吸入薬の一部やインフルエンザの吸入治療薬にも微量な乳糖を含んでいます。

乳のアレルギーがあって、すでに食べられるようになっている方でも、インフルエンザに罹った時など体調が悪い時、このような薬を使用するとアナフィラキシーになる可能性があります。処方前に乳アレルギーの既往を必ず伝えるようにしましょう。

 

 

 

 

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