今日から寒さが厳しくなりましたね。11月も残すところわずかになりました。ということは、今年もあと1か月ほどですね。
全国的にはインフルエンザが流行期に入ったようです。先日、吹田市の休日診療所で勤務しました。発熱で受診されたお子さんの中にインフルエンザA型が陽性になった方が数名おられました。先週まで当院ではマイコプラズマ感染症を疑う患者様が多かったです。以前に通信でご紹介したマイコプラズマの検査キットは注文しているにも関わらず1か月以上入ってきません。全国的にマイコプラズマ感染症が大流行しているので検査キットが不足しているようです。仕方ないので、経過や聴診所見、レントゲンなどから臨床的にマイコプラズマ感染症・気管支炎・肺炎と診断させていただいております。
気管支喘息の新しい治療薬レルベア®やアトピー性皮膚炎治療薬のモイゼルト®が入荷しにくい状況となっており、今後は処方薬を変更しないといけない状況になりそうです。皆様にはご迷惑をおかけすることになるかもしれません。
先日、土曜日のインフルエンザワクチンの外来を終えてから、アレルギーの勉強会に参加しました。こぢんまりとした勉強会だったのですが、講師が御高名な大矢幸弘先生で、大矢先生の話を大阪の勉強会で聞けることはそうないことで、わくわくしながら参加しました。大矢先生は国立成育医療研究センターのアレルギーセンター長をされていた先生でアレルギーを専門としている医師で知らないという人はいない(100人いれば100人が知っている)、非常に御高名な先生です。講演の後に、なんでも質問に答えますという時間がありました。大矢先生に直接質問できる機会などめったにありませんので、この時ばかりと沢山質問させていただきました。今日はその中から一つご紹介します。
皆さん、パラベンってご存じですか?
パラベンは細菌やカビなどの微生物の増殖を防ぐ防腐剤として使用されている成分です。安価で人体に対する毒性が低く、食品、医薬品、化粧品などさまざまな製品に広く使用されています。近年、このパラベンがアレルギー疾患と関連しているという報告が欧米で散見されるようになり、日本でも乳幼児を対象にパラベンとアレルギー疾患の関係についての研究がなされました。その結果、尿中のパラベンの濃度が高いお子さんでは低いお子さんに比べて、アトピー性皮膚炎の発症が有意に高い結果となったようです。気管支喘息に関しては特に差は認めなかったとのことです。また成人ではパラベン類の使用によって女性のアレルギー性鼻炎の罹患に差を認めたとのことです。男性ではこのような差は認められなかったとのことです。成人女性では化粧品やローションなどの日用品、乳幼児では保湿剤などの外用剤に含まれるパラベン類に暴露されることで、アレルギー疾患のリスクが上がる可能性が示されたということです。
また6か月までに喘鳴(ゼーゼー)の既往があるお子さんは、喘鳴の既往のないお子さんに比べて妊娠中の母親の尿中パラベン濃度が高く、妊娠中の母親のパラベンの暴露が子どもの気道の炎症に影響を与える可能性が考えられるようです。
アレルギー素因のあるお子さんに、出生時から保湿剤で使用することで、1歳時点でのアトピー性皮膚炎の発症を抑えることができるという研究報告から、最近ではアレルギー素因の有無にかかわらず保湿剤が頻用されていますが、この保湿剤の使用で食物アレルギーの発症が増えるとの報告もあります。学会でも、万人に保湿剤を使用することが果たして良いことなのかどうか議論になっています。保湿剤を使う対象者、保湿剤として何を使用するかを見極める必要があると言われています。秋冬生まれのお子さんは、アトピー性皮膚炎の発症が多いことが報告されていますので、アレルギー素因を持つお子さんの場合、保湿剤の塗布は行っていただくのが良いと思いますが、どの保湿剤を選ぶかは慎重に判断する方がよさそうです。パラベンは病院から処方される保湿剤などの軟膏、ヘアケア用品、化粧品、ボディウォッシュ用品等様々なものに含まれており、これらをすべて省いて生活をすることは現実的に難しいと思います。保湿剤として何を使うか、今までは塗り心地の良いもので食物由来でないものをおすすめしてきましたが、今後はこのパラベンに関してもお伝えしていこうと思います。
パラベン以外にもアトピー性皮膚炎のスキンケアについて、ステロイド外用薬の塗布回数について等、質問させていただき非常に勉強になりました。
最後は大矢先生と一緒に記念写真も撮っていただきました(掲載の了解を取り忘れたので掲載できません( ノД`)シクシク…。)
学会もそうですが、こういった勉強会が現地開催され、様々な質問をその場でできることやご高名な先生とお話できることの良さも実感しました。
先日患者様の保護者の方から、えびくり通信を毎回楽しみにしていますという、ありがたいお言葉をいただきました。この通信では普段診察室では話しきれないけれど、皆様に少しでも知って欲しいことを書くようにしています。今後も勉強会や学会に参加し知識の向上に努め、皆様にもお伝えしていきたいと思います。