『気管支喘息の発作には咳止めは使わない』 |えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

『気管支喘息の発作には咳止めは使わない』 |えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

1月も残すところ1週間になりました。先日年明けしたばかりだと思っていたのに。昔から「1月は行く」「2月は逃げる」「3月は去る」といいますが、本当にそのとおりです。このことばは年度末に向けて1年間のまとめを行い、更なる目標設定を行う大切な時であることを例えた言葉だそうです。子ども達にとって3学期は今年度の最終学期。インフルエンザも年末年始にひと段落したようですので、元気に登園・登校していただきたいです。 

1月は2つの研修会にお声がけいただき、講演させていただきました。1つ目はアドバイザーを務めるNPO法人ノーベルの子どもの病気研修会。病児保育を担当してくださるスタッフに2時間ほどお話させていただきました。少しでも安心して保育にあたっていただけるとよいなあと思います。2つ目は豊中市の就学前施設の職員を対象とした食物アレルギー講習会です。園や学校の先生方、調理員、栄養士の方が食物アレルギーに対して正しい知識を持っていただき、食物アレルギーを持つお子さんが安心して通学・通園できるようにすることは、アレルギー専門医の責務だと思っていますので、どんなに小さな講演会でもお声がかかれば出かけていきます(単一の幼稚園の勉強会にもお邪魔したこともあります)。学校や保育園の給食は安全であるのが当然。でも人間ですのでミスはつきものです。どのように給食の安全を維持していただくか、また、誤食して症状が出てしまった時どのように対応するか、見直していただくきっかけになればと思いました。

話は変わって、本日のテーマは『気管支喘息の発作には 咳止めは使わない』 です。え??咳止め使わないの?と思われる方もあると思いますが、気管支ぜんそくの発作に咳止めを使っておられ、悪化することはたびたび経験してきました。気管支ぜんそくで咳が止まらない時に気管支がどうなっているか考えると咳止めを使わない理由は明確です。

気管支喘息の発作時は、気管支の周囲にある気管支平滑筋が収縮し、さらに気道(空気の通り道)は痰などの分泌物が充満しています。気管支喘息で咳が止まらないときは、気管支平滑筋を緩める薬(気管支拡張剤)を吸入、または内服し、気管支の収縮を解消します。そして咳をすることで気道にたまった痰を排出させていきます。発作時に咳止めを使うと、咳が止まることで痰が排出できなくなり、さらに痰がたまり、気管支が痰でおぼれてしまい、ますます悪化していきます。逆に言うと、咳止めを使うと悪化していく咳の場合は気管支喘息の発作の可能性が考えられます。また気管支喘息と診断しているお子さんには、私はあえて咳止めは処方しないことが多いです。気管支喘息のあるお子さんは風邪の時に発作を起こしやすく(気管支喘息の治療を継続していくことで、風邪をひいたときの発作も出なくなります)、受診していただいたときにはゼーゼーした音は聴診で聞かれなくても翌日には発作になっている可能性もありますので、あえて咳止めは処方しないようにしています。小児気管支喘息ガイドラインにも発作時には中枢性鎮咳薬(メジコン®、アスベリン®)の使用は控えるようにと記載されています。研修医のころ、師匠末廣先生からいろいろなことを教えていただきましたが、安易に咳止めは使用しないという教えはその一つです。咳止めを使用する前に、この咳はどこから出ている咳なのかをきちんと聴診で確認すること、咳は気管支にたまっているもの(痰など)を押し出そうという人間の防御反応であり、必要でせき込んでいる場合もあること、気管支喘息の咳なら、アレルギーの炎症の結果、痰などの分泌物がたまりそれを気道から排出する自己防衛反応だから咳止めを使う必要はないと教えられました。理由が分かれば、その通りだと、納得でした。

咳止めを出さない理由、わかっていただけたでしょうか?

気管支喘息の発作で咳止めを飲まれている患者さんに、咳止めをやめて気管支拡張剤を出すだけで、咳がましになりましたと言っていただけます。聴診の大切さ、どの薬を使うかの大切かを実感する瞬間です。

夜間せき込んで目を覚ましてしまうような咳は喘息の咳の可能性があります。その場合は咳止めを使用することでかえって悪化することもありますので、咳止めを飲んでもよくならない咳の場合は漫然と飲み続けることは控えるようにしましょう。

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