先日、大阪市内で開催された小児臨床アレルギー学会に参加しました。
小児臨床アレルギー学会は、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会とアレルギーに関する学会の中で最もコメディカル(医師以外の看護師、薬剤師、管理栄養士)が多く所属する学会です。小児アレルギーエデュケーターは小児臨床アレルギー学会が認定する資格です。
学会は知識のブラッシュアップに非常に大切な場です。今回は市民公開講座の座長をさせていただき、普段話を聞くことが少ない小児アレルギーエデュケーターの資格を持つ薬剤師や管理栄養士の話を聞くことができ有意義な時間でした。
小児のアトピー性皮膚炎の治療にここ数年外用薬以外の薬(注射薬、内服薬)が使用できるようになりました。しかし、一番基本となるのはやはり外用療法です。今日はアトピー性皮膚炎の外用薬の塗り方についてご説明します。
当院でアトピー性皮膚炎などに外用薬を処方する場合は、医師の指示の元、看護師がどの薬を、どこに、どのように、どのくらいの期間塗るかをお伝えさせていただいています。アトピー性皮膚炎で皮膚の炎症が強い時期(湿疹や皮膚紅斑がひどい時期)において、炎症を速やかに抑えてくれる薬はやはりステロイド外用薬です。ステロイド外用薬は強さによりⅠ~Ⅴの5つのランクがあり(Ⅰが最も強い薬)ます。小児のアトピー性皮膚炎には湿疹の重症度や部位応じてⅡ~Ⅳ群の外用薬を用いることが多いです。塗る量としてはFTUが適切な量と言われています(大人の人さし指の第1関節までの量を掌2枚分の面積に塗り広げる)。ステロイド外用薬がプロペトなどの薬と混合されている場合は、ぴかーと光るくらい、ティッシュペーパーがくっつくぐらい塗るのが適切な量です。ステロイド外用薬の塗布は1日2回が原則で3回以上塗っても効果には差がないと言われています。湿疹がなかなか治らないと言って受診される患者さんは処方されているステロイド外用薬のランクが弱すぎるか、正しい塗り方ができていない場合がほとんどです。正しい塗り方をすれば小児アトピー性皮膚炎の湿疹は1~2週間程度で皮膚表面はかなりきれいになります。しかしアトピー性皮膚炎では皮膚表面がきれいになっても皮下での炎症が続いていますので、すぐにステロイド外用薬の塗布をやめると湿疹がぶり返してきます。火事の最中に消火活動を途中でやめてしまったら、火が再び燃え盛るのと同じです。皮膚が一見きれいになってからが勝負でいかに湿疹のない状態を維持できるか、維持できるように塗り薬を継続することが大切です。
以前はステロイド外用薬の使用頻度を減らす(ステップダウン)場合、ステロイド外用薬の代わりとして使用できるのは保湿剤かプロトピック®軟膏しかなく、ステップダウンすると湿疹が再燃し、なかなかステロイド外用薬の頻度を減らすことができない場合もありました。最近登場したコレクチム®軟膏やモイゼルト®軟膏はステロイド外用薬とは全く別の機序でアトピー性皮膚炎の炎症を抑えることができるので、これらの薬を寛解の維持に使用することで以前よりステップダウンを速やかに行うことができるようになりました。コレクチム®軟膏やモイゼルト®軟膏の強さはステロイド外用薬のⅣ群より少し弱い印象があります(私見)。アトピー性皮膚炎で炎症が弱い場合は最初から使用することができますが、炎症が中等度以上の場合はやはりステロイド外用薬で炎症を落ち着けてから使用するのが良いと思います。
きちんとした塗り方をすれば、多くのアトピー性皮膚炎の湿疹は良くなります。正しい塗り方をして湿疹のない皮膚を目指しましょう。