ご入学・ご入園そしてご進級おめでとうございます。
桜の満開の便りが各地から届く今日この頃。新年度を迎えて1週間が経ちました。
春休みも残すところあと数日。入学式や入園式を控えておられるお子さんもおられると思います。いよいよ新年度のスタートです。私が小学生の頃は、クラス替えは2年に一度(1,3,5年生)で、クラス替えのない学年の時は担任もクラスメイトも変わることなく、教室が変わるだけでした。最近は毎年クラス替えがあるので、だれと一緒になるかなあ?担任の先生はだれかなあ?と楽しみとちょっぴり不安も感じる今日この頃でしょうか?
私が研修医の頃、春といえばロタウイルス感染症が流行しました。ロタウイルス胃腸炎のお子さんを診察すると、春が来ましたね、と、職場の仲間と話をしていたものです。ロタウイルスはワクチンの定期接種が始まってから、患者さんの数が激減し、ワクチンの効果を感じました。
今年に入り、麻疹や百日咳が流行しているというニュースを目にします。
百日咳(pertussis, whooping cough)は、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症で、母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する疾患です。1歳以下の乳児、特に生後6カ月以下では死に至る危険性も高い疾患です。百日せきワクチンを含む三種混合ワクチン、四種混合ワクチン、五種混合ワクチンの接種が実施されており、その普及とともに百日咳の発生数は激減しました。しかし、ワクチン接種を行っていない人や接種後年数が経過し、免疫が落ちた人での発病は見られており、今年に入り患者数が急増しています。
百日咳の臨床経過は3期に分けられる。
- カタル期(約2週間持続):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しくなります。
- 痙咳期(約2~3週間持続):次第に特徴ある発作性けいれん性の咳となります。これは短い咳が連続的に起こり(スタッカート)、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音が出ます(笛声:whoop)。この様な咳嗽発作がくり返すことをレプリーゼと呼びます。しばしば嘔吐を伴います。
発熱はないか、あっても微熱程度です。非発作時は無症状ですが、何らかの刺激が加わると発作が誘発されます。ぜん息の発作と同様に、夜間の発作が多いのが特徴です。 - 回復期(2、3週~):激しい発作は2~3週間で認められなくなりますが、その後も時折忘れた頃に発作性の咳が出ます。全経過約2~3カ月で回復します。成人の百日咳では咳が長期にわたって持続しますが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、やがて回復に向かいます。軽症で診断が見逃された場合でも、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源となります。
百日咳菌に対する治療として、生後6カ月以上の患者にはエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬を用います。これらは特にカタル期では有効です。通常、菌排出は咳の開始から約3週間続きますが、エリスロマイシンなどによる適切な治療により、服用開始から5日後には菌の分離はほぼ陰性となります。治療薬であるマクロライド系抗菌薬に耐性の百日咳が検出されており、先日、日本小児科学会から耐性菌が増加していることに対して注意喚起がありました。
予防ではワクチンが有効です。現在、百日咳に有効なワクチンは 三種混合・四種混合・五種混合ワクチンの中に含まれ、これらの定期接種導入により百日咳の患者数は減少した。しかし、現行の定期接種は生後2か月から開始され、0 歳代に3 回と1歳を超えて1回の追加接種の計4 回接種で、それ以降の追加接種は設定されていない。そのため、抗体が減少してくる幼児期から学童期では4回のワクチン接種を受けているにも関わらず、感染者の報告がなされています。「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール」では、任意接種となりますが、就学前に 三種混合ワクチンを、また現在 11~12 歳の定期接種となっている二種混合ワクチンの代わりに三種混合ワクチンの接種を推奨しています。
来週から大阪・関西万博も開催され、百日咳が園や学校で流行することも十分考えられます。費用は発生しますが、ぜひ、三種混合ワクチンの追加任意接種をご検討いただければと思います。三種混合ワクチンの予約はクリニック窓口又は電話でお願いします(ネットからはお取りいただくことができません)。