食物アレルギー、発症を予防するためにできること|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

食物アレルギー、発症を予防するためにできること|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

週末は秋晴れで、絶好のスポーツ日和でしたね。土曜日はお休みをいただき、ご迷惑をおかけしました。雲ひとつない晴天の下、小学校の運動会に参加しました。6年生の団体演技では、演技終了後、やり切った子どもたちの顔が自信と達成感に満ち溢れていました。運動会は競技だけではなく、みんなで協力することの大切さ学ぶ行事だなあと改めて思いました。秋はスポーツの秋であるとともに食欲の秋、収穫の秋です。一時期店頭から姿を消してしまっていた米も、新米が店頭に並ぶようになりましたね。

  先日、成人の方が居酒屋で食事をした後、嘔吐と全身の紅斑・灼熱感の症状が出て病院を受診され、食物アレルギーを疑われたとのことで受診されました。話を聞いて、疑ったのがアニサキスのアレルギー。アニサキスのアレルギーは、アニサキス症と勘違いされやすいのですが、アニサキス症は加熱すれば魚は摂取できるのに対してアニサキスアレルギーは生でも加熱でも症状が出る可能性があり、アニサキスが寄生しやすい魚はできるだけ摂取を控える必要があります。アレルギーの検査をするとアニサキスの特異的IgE抗体が高く、アニサキスアレルギーの診断に至りました。突然発症したのかとの質問を受けましたが、おそらくアニサキスが感染した魚を食べている間に感作が進み(特異的IgE抗体ができてきていた)、閾値を超え、アレルギーの症状として出てきたのであろうと思います。

 

食物アレルギーは本人含め家族の生活を一変させることがあります。できれば食物アレルギーの発症は防ぎたいですね。成人の食物アレルギーは発症を予防することは難しいのですが、乳児期の食物アレルギーの発症予防に関して現時点で分かっていることを今日は紹介しようと思います。

 

1:乳児期の湿疹は食物アレルギーを引き起こす

英国の生後3か月の完全母乳栄養の乳児619人から得られたデーターから、生後3か月でアトピー性皮膚炎があると重症度に比例して食物抗原の感作を受ける確率が高くなる1)

2:二重抗原暴露仮説2)

湿疹のある皮膚から体内に入った食物アレルゲンはアレルギーを引き起こす可能性が高くなるが、適切な量と時期に経口から摂取された食物アレルゲンはアレルギー発症を抑制する方向に働く(これを免疫寛容といいます)という考え方です

 

この考え方からいえることは

  • 乳児期の湿疹はなるべく早く治療して湿疹のない皮膚にした方が食物アレルギーの発症を抑えることができる可能性がある
  • 適切な量と時期に経口摂取を開始すれば食物アレルギーの発症を予防できる可能性がある

 

ということです。

 

これを証明するいくつかの研究が報告されています

  湿疹を早期に治すと食物アレルギーの発症を抑制することができるに関しては生後早期発症のアトピー性皮膚炎の患者さんに積極的に湿疹への介入を行うと、行わなかった場合に比べて1歳時点での鶏卵アレルギーの発症を25%抑制できたという研究(PACI study)³)があります。

 早期摂取の有効性に関してはPETIT Study4という研究があり、湿疹をきちんとコントロールしたうえで、乳児期に早期に鶏卵の摂取を開始した方が、1歳時点での鶏卵アレルギーの発症を抑制できたという報告です。ここで大切なことは湿疹をきちんとコントロールするということです。また乳に関しても同様な報告があります。

 

SPADE study (生後13ヶ月、人工乳を飲む研究)⁵)
生後13ヶ月の2ヶ月間、人工乳10mLを飲ませたところ、生後6ヶ月の牛乳アレルギーは、生後13ヶ月に人工乳を飲んだ子供の0.8%、人工乳を飲んでいない子供の6.8%にみられたと報告されています。この研究結果から、生後13ヶ月の2ヶ月間は人工乳を少量飲むことで牛乳アレルギーを予防することができる可能性が示されました。

一方で

 ABC study (生後3日間、人工乳を飲む研究)⁶
アレルギー疾患をもつ家族がいる生後すぐの赤ちゃんに対して、生まれて最初の3日間人工乳5mlを飲ませました。その結果、2歳の牛乳アレルギーは、生後3日間に人工乳を飲んだ子どもの13.2%、人工乳を飲んでいない子どもの2.6%にみられました。
この研究結果から、アレルギー疾患をもつ家族がいる赤ちゃんの牛乳アレルギーを予防するためには、生後3日間は人工乳を避けることが望ましいかもしれないと報告されています。

 

ただ生後3日まで人工乳を飲ませないというのは、低血糖や脱水などを引き起こす可能性もあるので医師の指示が必要です。

 保護者にお伝えしていることは

1.乳児湿疹であれ、アトピー性皮膚炎であれ、湿疹を長引かせることは食物アレルギーや他のアレルギー疾患になる可能性が高くなるので適切な抗炎症治療を行い湿疹を速やかに抑える必要があること

2.食物アレルギーを過度に心配せず、アレルギーになりやすい卵、乳、小麦の摂取は遅らせずに開始すること、また新生児期に混合栄養で開始された方には、可能衛あれば1日10㎖でもよいので、人工乳を継続して与えていただくように

ということです。

 以前にえびくり通信でも紹介しましたfufumuの初めての食材応援食『pagupa』は赤ちゃん本舗でも販売が開始になったそうです。ごく微量(0.5g)の卵黄や卵白を手間をかけずに摂取できますし、微量からの摂取が可能ですので、離乳食で卵の摂取を進めるのが心配な保護者の方にも安心して使っていただけるかあと思います。当院にもpaqupaの資料はありますので、気になる方は受診の際にお声がけください。https://fufumu.com/pages/paqupa

 乳児期の湿疹コントロールはとても大切です。軟膏の塗り方やスキンケアに関するご質問などありましたら、受診時またはスキンケア外来でお気軽に聞いてくださいね。

 

1)Flohr C et al. Atopic dermatitis and disease severity are the main risk factors for food sensitization in exclusively breastfed infants. J Invest Dermatol,2041:134 : 345-350

2)Lack G. Epidemiologic risks for food allergy. J Allergy Clin Immunol. 2008; 121(6): 1331-1336.

3)Yamamoto-Hanada K et al. Enhanced early skin treatment for atopic dermatitis in infants reduces food allergy
J Allergy Clin Immunol. 2023; 152(1): 126-135

4)Natsume O ea.al. Two-step Egg Introduction for preventing egg allergy in High-risk Infants with eczema (PETIT study): a double-blind, placebo-controlled, parallel-group randomised clinical trial.Lancet, 2017 :389, 276-286.

5)Urashima M, Mezawa H, Okuyama M, et al. Primary Prevention of Cow’s Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation with Cow’s Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr 2019; 173: 1137-1145.

6)Sakihara T, Otsuji K, Arakaki Y, et al. Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow’s milk allergy. J Allergy Clin Immunol 2021; 147:224-232.e8.

 

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