NO.42 食べたらまぶたが腫れる…その原因、意外な「天然色素」かもしれません|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

NO.42 食べたらまぶたが腫れる…その原因、意外な「天然色素」かもしれません|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

秋が深まり、朝夕の風に少しずつ季節の移ろいを感じるようになりました。


先日、土曜日の診察を休診にさせていただき。子どもの小学校で運動会に参加しました。
思えば、自分が小学生だった6年間、そして保護者として過ごした12年間を合わせると、18年にわたって小学校の運動会を見てきたことになります。今年は、その締めくくりとなる「小学校最後の運動会」でした。組体操やリレーに挑む子ども達の表情は真剣そのもので、やり切った後の晴れやかな笑顔がとても印象的でした。時代とともに、組体操の内容も変わってきました。かつてのような大技中心のプログラムから、安全を最優先にした構成へと移行しています。技の迫力は少なくなったかもしれませんが、子どもたちが一人ひとりの役割を果たし、仲間と呼吸を合わせ、全員で一つの形を作り上げる姿には、美しさと感動がありました。努力する姿の尊さ、仲間を信じることの力を改めて感じました。

思い返せば、コロナ禍で運動会が縮小になった年もありました。声援のない、静まり返ったあの日から、こうして再び子どもたちの笑顔と歓声が響く光景を見られるようになったことは、何よりうれしいことです。子どもたちの全力で頑張る姿には、人を元気づける力があります。成長すること、努力を重ねること、仲間と支え合うこと————それらは、日々の診療で私たちが大切にしている「人に寄り添う医療」にも通じるものだと感じました。

長年見守ってきた小学校の運動会が、大切な学びと温かい余韻を残してくれました。

 

今日はコチニールアレルギーについてお話させていただきます。

お菓子や飲み物、ヨーグルトや飲料、菓子、ジャム、アイス、ソーセージの原材料表示に「コチニール色素」「カルミン酸」と書かれているのを見たことがありますか?これらは、南米原産の「コチニールカイガラムシ」という虫から作られる赤い色素です。天然由来で安全と思われがちですが、抽出物中には、ごく微量のカイガラムシ由来のタンパク質が残存しており、それが即時型のアレルギーの主な原因になることが知られています。また食品だけでなく、化粧品にも広く使われています。特に、口紅・チーク・アイシャドウ・マスカラなど、赤やピンクの色味を出すための製品によく含まれています。

成分表示では以下のように記載がされている場合に「コチニール色素」や「カルミン」が含まれています。
 ・食品の場合=コチニール色素、カルミン酸色素
 ・化粧品の場合=カルミン
 ・海外の食品や化粧品=E120、クリムゾンレーキ、ナチュラルレッド4C.I.75470

 コチニール色素が原因で起こるアレルギー反応は、即時型アレルギー(I型アレルギー)と遅延型アレルギー(IV型アレルギー)2タイプの症状があります


 即時型アレルギーは、カルミンが配合された化粧品の使用により、皮膚からカルミンが浸透することで、使用部位に赤みやかゆみが起こります。このように皮膚に症状が出たことがある方が、コチニール色素が含まれた食品を摂取し、直後から数分後に、著しいまぶたの腫れやかゆみ、全身の蕁麻疹、呼吸困難などが起こり、重症の場合は、アナフィラキシーからアナフィラキシーショックになることもあります。2007年以前に、若い女性がカンパリソーダを飲んでアナフィラキシーになり、原因がこのコチニール色素だったという報告が相次ぎ、以降カンパリにコチニール色素は使われなくなりました。

私も中津病院で勤務しているころにコチニールアレルギーの症例を経験したことがあります。この方はお土産で頂いた赤い色のマカロンを食べてアナフィラキシーになり、原因を調べるために中津病院を受診されました。コチニール色素のアレルギーは一般的な血液検査ではわかりませんので、コチニール色素を用いたプリックテストになります。製造会社にコチニール色素の提供をお願いしましたが断られたため、症状が出た赤色のマカロンと赤色でないマカロンを使用してプリックテスト(皮膚に試薬を置き、針で軽く刺して反応を見る方法)を行い、赤色のマカロンにのみ陽性になることを確認しました。

コチニールのアレルギーは、アレルギーになるきっかけが化粧品であることが多く、コチニール色素によるアレルギー症状の多くは女性です、そして特徴的な症状として眼瞼腫脹(まぶたが腫れる)があります。最近は化粧をする年齢が低年齢化しており、それに伴いコチニールアレルギーの発症も若年化しているようです。海外製の化粧品を使用する際は特に成分表示に注意してほしいと思います。


 遅延型アレルギーは、主にアレルギー性接触皮膚炎(いわゆるかぶれ)のことで、化粧品を塗布するたびに塗布した部位に数時間から翌日以降に湿疹、かゆみが起こります。これらはパッチテストで診断します(パッチテストは主に皮膚科で行っています)。

赤やピンク色の化粧品で「肌が荒れた」ことを経験したことがある方は、同じく赤色の食品を食べる際に少し注意してみてください。何かわからないけど、食べたら、瞼が腫れるし、喉がかゆくなる、息が苦しくなる、そんな女性の方がおられたら、コチニールアレルギーかもしれません。一度ご相談下さい。

 

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