11月も中旬になり、朝晩は冷え込みを感じる季節になりました。
今年はインフルエンザの流行が早く、吹田市内では多くの小中学校でインフルエンザによる学級閉鎖が出ています。クリニックの近隣の小学校、中学校でも学級閉鎖が多く出ていますが、不思議なことに、私が学校医を務めさせていただいている小学校ではまだ1クラスも学級閉鎖が出ていません。どんな違いがあるのかなあ。感染予防のために、帰宅したときに手洗い、うがいはかかさず行ってくださいね。インフルエンザの予防接種も12月以降の予約はまだ余裕がありますので、接種ご希望の方はwebよりご予約下さい。
これからの季節、学校ではマラソン大会や縄跳びなど屋外で体を動かす機会も多くなりますね。皆さんはマラソンはお好きですか?私は大嫌いでした。高校時代、断郊競争という名のマラソン大会があり(今でも伝統行事だとお聞きしました)、毎年、淀川の河川敷を6㎞弱走りました。寒いし、しんどいし…。3Km走るなら同じ距離を泳ぐほうがずっと良い私です。それはさておき、「走っている途中に息が吸いにくくなった」「のどが苦しくなって運動を続けられない」といった症状を経験されたことはありますか?
運動時に咳や呼吸困難が生じる疾患には運動誘発喘息(EAI)がありますが、運動誘発性喘息と非常によく似た症状を示す疾患に「運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)」があります。EILOはEIAと同じような症状を示しますが、病態や治療方法は大きく異なります。今回は、このEILOについて説明したいと思います。
■ 運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)とは?
EILOとは、運動中に喉頭(のどの入り口)が一時的に狭くなってしまうことで、息が吸いにくい状態です。(一方運動誘発喘息は息が吐きにくい状態です)
10〜20代の若い世代に多く、特に部活やスポーツで負荷の高い運動をしている方に見られます。日本での頻度は不明ですが、欧米では思春期の5~7%、思春期アスリートの15~35%に認められ、女性に多いと報告されています。
■ 症状
EILOに特徴的なのは次のような症状です。
- 息を吸う時に「ヒューヒュー」「ゼー」と音がする
- 胸よりも “のど” が苦しくなる
- 発作のように急に息が入りにくくなり、運動をやめると数分で自然に落ち着く
- 咳や痰はほとんど出ない
- 吸う息が苦しいため、不安やパニックに近い状態になることも
運動誘発喘息との違いは下記のようになります
|
項目 |
EIA(運動誘発喘息) |
EILO(運動誘発喉頭閉塞) |
|
発症部位 |
下気道(気管支) |
上気道(喉頭) |
|
発症時期 |
運動後 |
運動中 |
|
主な症状 |
咳、喘鳴(呼気時)、胸苦しさ |
息を吸う時のヒューヒュー音、喉の閉塞感 |
|
ステロイド 吸入薬の効果 |
有効 |
無効 |
|
診断法 |
スパイロメトリー、運動負荷試験 |
喉頭内視鏡(運動中) |
|
対応 |
吸入β2刺激薬 |
呼吸リハビリ、発声訓練 |
■ なぜ起こるの?
のどの奥には、声を出したり空気の通り道を調整する「声門」という部分があります。
通常は息を吸う時にしっかり広がるのですが、EILOでは、
- 強い呼吸による筋肉の反射
- 緊張やストレス
- のどの使い方のクセ
- のどの乾燥・軽い炎症
などがきっかけとなり、声門やその周辺がうまく開かず、空気が吸い込みにくくなると考えられています。
■ 診断について
症状の聞き取りに加えて、喉頭ファイバーで運動負荷をかけながら、喉の動きを確認します。
「喘息治療をしても良くならない」「運動の時だけ喉が苦しい」という場合は、EILOを疑う必要があります。
■ どうやって治すの?
EILOは 呼吸法の改善 と リハビリテーション によって、コントロールしやすくなる病気です。薬で治すというより、正しい呼吸の使い方を身につけることが中心になります。
主な治療方法
- のどを開く 呼吸トレーニング(腹式呼吸・リラックス呼吸)
- 発作時に楽になる 呼吸のコツ(鼻から吸って口から細く吐くなど)
- 不安や緊張のコントロール
- のどの乾燥予防、炎症のケア
喉頭はストレスに非常に敏感な部分でストレスや刺激物の吸引、強い香り、胃酸の逆流など様々な誘因によって閉塞しやすいという特徴があります。一方自分がこの疾患だと認識するだけで症状が軽快することもあります。
寒さが増すこの季節、運動中に咳が止まらなくなる、運土していると息苦しいという症状が出やすい時期でもあります。でも子どもたちは体を動かして体力をつける時期でもあります。気管支喘息の治療をきちんと行っているのに運動時だけ息が苦しくなる、このような症状があるときは、運動誘発喉頭閉塞症の可能性を考えてみる必要がありそうですね。

