日増しに暖かくなり、春の訪れを感じる季節となりました。 しかし、スギ花粉症を抱える患者さんにとっては、手放しでは喜べない、辛いシーズンの到来でもあります。
今年のスギ花粉は、北日本や東日本では例年より多く、西日本でも例年並みの飛散が予想されています。「すでに鼻や目の症状が出ている」という方も多いのではないでしょうか。
実は1月から始まっている「もう一つの花粉」
よく患者さんから、「1月頃から、すでに鼻アレルギーの症状が出るのですが、スギ花粉もう飛んでいますか?」というご質問をいただきます。 実はこれ、スギ花粉よりも一足早く飛び始める「ハンノキ」花粉による症状の可能性が高いのです。
ハンノキは全国に自生していますが、特に近畿地方では六甲山などに多く生息している樹木です。
そして、この時期にぜひ知っておいていただきたいのが、「花粉症と食べ物の意外な関係」についてです。
「昔は食べられたのに……」その違和感、気のせいではありません
「生のリンゴやモモを食べると、口の中がピリピリしたり、喉が痒くなったりすることはありませんか?」 「小さい頃は大好物だったのに、高校生くらいから果物を食べると口が痒くて……」
そんな経験がある方は、単なる好き嫌いや体調不良ではなく、「花粉食物アレルギー症候群(Pollen Food Allergy Syndrome: PFAS)」という疾患かもしれません。
なぜ鼻や目の症状であるはずの花粉症が、口の中の違和感として現れるのか。花粉食物アレルギー症候群の仕組みと注意点について、解説します。
なぜ「花粉症」で「食べ物」に反応するの?
私たちの体には、異物を攻撃する免疫システムがあります。 花粉に含まれるタンパク質と、果物や野菜に含まれるタンパク質の中には、構造がそっくりなものがあります。
すると、果物が体内に入ってくると免疫が「あ!花粉(敵)がやってきた!」と勘違いして攻撃を仕掛けてしまいます。これを「交差反応」と呼びます。
| 原因花粉 | 関連する食べ物 (PFAS) | 特徴・注意点 |
| シラカンバ・ハンノキ | リンゴ、モモ、梨、豆乳 |
PR-10が原因。加熱で弱まることが多いが、豆乳はアナフィラキシー注意。
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| スギ・ヒノキ | トマト、桃、オレンジ、柿 |
GRPが原因。ヒノキとGRPの反応では、運動や入浴で症状が悪化する「二次的要因」に注意。
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| ヨモギ | セロリ、ニンジン、スパイス |
クミン、コリアンダー等のスパイスで重篤化するケースがある。
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| カモガヤ(イネ科) | メロン、スイカ、オレンジ |
夏場のイネ科花粉の時期に、口の中がピリピリする場合は要注意。
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「加熱すれば大丈夫」と以前は言われていましたが・・・・
以前は、加熱をすれば症状が出にくいと言われていましたが、最近になってアレルゲンの種類によって異なることが分かってきました
- PR-10(リンゴなど): 熱に弱いため、ジャムやアップルパイなど加熱すれば食べられることが多いです。
- GRP・LTP(桃、柿、スパイスなど): 熱に強いため、加熱しても症状が出る可能性があり、より注意が必要です。
特に注意したい食べ物の組み合わせ
原因となる花粉の種類によって、反応しやすい食べ物が異なります。
① ハンノキ・シラカンバ(1月〜5月)
- 主な食品: リンゴ、モモ、梨、イチゴ、サクランボ
- 豆乳に注意!: 豆腐や納豆は大丈夫でも、豆乳を飲むと激しいアレルギー(アナフィラキシー)を起こす例が報告されています。
② ヒノキ(3月〜5月)
- 主な食品: 桃、オレンジ、柿
- 重症化リスク: 加熱してもアレルゲンが壊れにくいため、喉が腫れるなどの重い症状が出やすいのが特徴です。
③ ヨモギ(8月〜10月)
- 主な食品: セロリ、ニンジン、スパイス(クミン、コリアンダー等)
- カレーに注意: 市販のカレールーに含まれるスパイスで症状が出ることもあります。
診断と対策
「もしかして?」と思ったら、まずは正確な原因を知ることが大切です。
- 血液検査: どの花粉に対して反応があるか調べます。
- プリックテスト: 疑わしい果物や野菜の実物を使い、皮膚の反応を直接確認します(Prick to Prickテスト)。
PFASは、乳幼児のアレルギーに比べて自然に治りにくいのが特徴です。特に花粉が飛んでいる時期は症状が悪化しやすいため、無理に食べず、早めにご相談ください。
「生の果物を食べると喉がイガイガする」「特定のスパイスで違和感がある」といった症状は、PFASのサインかもしれません。気になる症状がある方は、お気軽にお問い合わせください。

