食物アレルギー(即時型)|吹田市千里丘の小児科|えびしまこどもとアレルギーのクリニック

〒565-0803 大阪府吹田市新芦屋下6-7 吹田新芦屋クリニックビル2F
TEL06-6877-0701
ヘッダー画像

食物アレルギー(即時型)

食物アレルギー(即時型)|吹田市千里丘の小児科|えびしまこどもとアレルギーのクリニック

食物アレルギーとは

『食べ物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体によって不利益な症状が惹起される現象』と定義されています。ポイントは免疫学的機序を介するという点です。食中毒や自然毒などの毒性物質による反応や乳糖不耐症などは免疫学的な機序が関与していませんので食物アレルギーではありません。 食物アレルギーには次のようなタイプがあります。(表1)

食物アレルギーのタイプ

即時型とは

食物アレルギーの中で最も多いタイプです。食物を食べてあるいは触れたり吸ったりして2時間以内にアレルギー症状を引き起こすタイプの食物アレルギーです。マスト細胞といわれる細胞は、皮膚や気管支に存在しており、表面にはIgE抗体がくっついています。ここに食物の中でアレルゲンとなるもの(主に食物の中に含まれるたんぱく質)が入ってきてこのIgE抗体にくっつくと、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった物質が大量に放出され、皮膚に蕁麻疹ができたり、気管支がむくんで呼吸が苦しくなったり、胃や腸が腫れて吐いたり下痢をするなどの症状を引き起こしてきます。(図1)

即時型とは

症状

皮膚などの局所の症状から、咳やぜん鳴などの呼吸器症状、嘔吐下痢などの消化器症状、全身性にアナフィラキシーまで症状は多岐にわたります(表2)。

食物アレルギーの症状

即時型のアレルギー症状を起こし医療機関を受診した患者さんの症状の出現頻度は図2のようになります。皮膚症状が一番多いですが、ショック症状も10%ほどみられています。

即時型症状の出現頻度

アレルギーの原因となる食品

アレルギーの原因となる食物は全年齢で見ると鶏卵、乳、小麦が最も多いです。最近の調査では鶏卵、乳についで木の実類となっていますが、木の実類にはクルミ、カシューナッツ、アーモンドなどの多種が含まれています。この中でも最も多いのはクルミで約50%ですので、実質的にはクルミより小麦のほうが多くなります(図3)。

全年齢における原因食物

年齢ごとに新たに発症する食品としては表のようになっています。魚卵はイクラがほとんどです(表3)。

新規発症の原因食物

診断方法

食物アレルギーの診断

診断するに際し大切なことは、①特定の食物により症状が誘発され、再現性があるかどうか、②その反応が血液検査や皮膚検査により免疫学的機序が証明されるかの2点です。 以下のように診断していきます。

1.問診

特定の食品を摂取して、2時間以内に上にあげたような症状が出た場合に食物アレルギーを疑います。食べたもの、調理方法、加熱の具合、摂取から症状までの時間などを詳細に問診します。

2.検査

次に血液検査や皮膚検査を行います。

抗原特異的IgE抗体検査

免疫学的機序であることを証明するための検査で、この検査が陽性だからと言ってそれまで症状なく摂取できていた食物を除去することは過剰な除去につながります。食べて症状が出た食物であっても、少しずつ食べていく方法が主流となっており、血液検査をしても意味がないといわれる先生もおられますが、血液検査で特異的IgE抗体の値を知ることで、症状誘発の可能性やどの程度慎重に進めていく必要があるかを判断できるので、必要な検査であると考えます。抗原特異的IgE検査には定量法と半定量法があります。食物アレルギーの診断には定量法を用います。定量法にはイムノCAP法とアラスタット3g法がありますが、この2つの方法には相関性がありませんので、どちらかの方法で統一して検査するのが望ましいです。

好塩基球ヒスタミン遊離試験

アレルゲンと特異的IgE抗体が結合し、好塩基球からヒスタミンを放出される程度を調べる検査になります。

皮膚テスト

アレルゲンエキスを皮膚にたらして、針で皮膚を傷つけ、15分後に膨疹の大きさを測定し、アレルギー反応の強さを評価します。血液検査では項目のない食物や薬のアレルギーなどに用いることが多い検査です。

検査の種類

3.食物経口負荷試験

実際に症状が出た食品を医療機関で食べていただく検査です。方法は各施設によって異なりますが、総負荷量を数回に分けて摂取します。当院では総負荷量を1回又は2回摂取(60分開けて2回目摂取)法で行っています。食物経口負荷試験の目的は食物アレルギーの確定診断、耐性獲得(治っているかどうか)の診断、安全摂取量の確認などです。一般的に抗原特異的IgE抗体の値が高いほど症状が誘発されやすいですが、負荷試験を実施しないと正確な評価はできません。

治療

『正しい診断に基づいた必要最小限の食物除去』が基本となります。心配だから、血液検査で陽性であったから除去するのではなく、症状が出ない量を食べ続けることが大切です。口周囲のみの赤みや湿疹は症状とはとらえず食べていけば次第に出なくなりますが、それ以上の症状が出ている場合は摂取量を減らす必要があります。症状が出ないように食べていくのであって、症状が出ても食べるのは危険を伴います。また除去が必要な場合、不足する栄養素に関しては他の食品で摂取する必要があります。

緊急時の対応

即時型症状への対応方法

食物アレルギーでは、どんなに注意していても間違って食べてしまうことは避けることができません。間違って食べてしまうことを想定して準備をする必要があります。食物アレルギーの症状が出た場合の対応は家族や園・学校などとよく話し合っておくことが必要です。 緊急時の対応時に使う薬には以下のようなものがあります。

1.エピペン

アドレナリンを自己注射するための薬剤でアナフィラキシー時にショックへの進行を防ぐことができる唯一の薬です。アドレナリンには血圧をあげる作用、血管を収縮する作用、気管支を拡張させる作用があり、注射直後から効果が見られますが、15~20分程度で効果がなくなります。一般に体重15㎏以上の方に処方しますが、食物アレルギーの重症度によっては、15㎏に足りなくても処方する場合もあります。

2.抗ヒスタミン薬

症状が皮膚のかゆみや蕁麻疹などに限定されている場合に使用します。抗ヒスタミン薬には眠気などの副作用があり、アレルギー症状としての眠気や意識障害との区別が難しくなる場合があり、眠気作用の少ない薬を選ぶ必要があります。

3.気管支拡張薬

食物アレルギーの症状で、咳や喘鳴などのぜん息のような症状が出る場合には気管支拡張薬の吸入や内服が有効です(吸入の方が効果は早く出ます)。喉のあたりが腫れて声が出にくい(嗄声)や苦しいといった症状(喉頭浮腫)には効果がなく、アドレナリンの注射が必要です。

学校や園での対応

保育園や幼稚園、学校などでは給食をはじめ食物に関係する様々な活動への配慮が必要となります。
自宅では症状が出ない量を食べていくのを基本としますが、園や学校の給食は摂取するか除去するかの2択の方が安全だと言えます。除去食や代替食を用意してくれる場合でも、献立の確認や調理場での混入、配膳時の誤配、食べちらかし、給食当番など配慮が必要となります。また図工などで牛乳パックを使用する場合は小麦粘土を使用する場合には注意が必要です。園や学校の担任、養護教諭などとよく相談する必要があります。

pagetop