食物アレルギー(即時型以外)
食物アレルギー(即時型以外)
特定の食物を摂取後安静にしていれば症状は出ませんが、運動負荷によってアナフィラキシーが誘発される病態で、初回の発症は10~20歳に多い。原因となる食品は小麦、甲殻類と果物が多く、食後2時間以内の運動で発症することが多いが、最大食後4時間経過して発症する報告もあります。運動以外で症状を誘発する可能性がある要因は以下のものがあります(表1)。
表1:症状に関係する運動以外の誘因
全身状態 | 疲労、寝不足、感冒 |
---|---|
自律神経 | ストレス |
女性ホルモン | 月経前状態 |
気象条件 | 高温、寒冷、湿度 |
薬剤 | アスピリンなどの薬剤 |
その他 | アルコール摂取、入浴、花粉飛散時期 |
食物アレルギー診療ガイドライン
2021より一部改変
皮膚症状はほぼ全例にみられ、呼吸器症状やショック症状がみられる。運動負荷としては運動負荷の大きいサッカーやランニングなどの種目が多いが、散歩や入浴で発症している例もあります。半数以上の症例で再発を経験し、頻回に発症する場合もあります。ただ、食物摂取と運動負荷が重なっていたとしても症状が出るときと出ない時があるのも特徴です。
即時型と同じように詳細な問診を行い、食物摂取後の運動負荷からFEDIAを疑います。次に摂取していた食品や可能性の高い食物から、アレルゲンとなったものを推定し、血液検査で抗原特異的IgE抗体やプリックテストを行います。IgE抗体検査やプリックテストで陽性にならない例もあり、誘発試験を行い、原因食物を確定することもあります。
初回の症状に関しては予防する方法はありません。また確立した治療もなく、アナフィラキシー症状が出た場合は、即時型症状の時と同様に対応します。原因食品を摂取した場合は、軽い運動を含め運動や入浴を控えるように指導したり、運動前には原因食品を摂取しないように指導します。学校給食後の昼休みや5時間目の体育の授業などで発症することも多く、学校関係者と綿密な情報共有が必要です。
生の果物や野菜などを摂取した際に、直接触れた口から咽頭部・喉頭部のあたりにかゆみ、刺激感や、喉が腫れて苦しくなるといった症状をしめす疾患です。花粉に対してできた特異的IgE抗体が、花粉と構造上よく似ているアレルゲンを持つ(交差抗原性のある)果物や野菜などと反応し症状が出ます。関与する花粉と食物には次のようなものがあります(表2)。
表2:関与する花粉と食物
カバノキ科 | ハンノキ、シラカンバ |
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ヒノキ科 | スギ |
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イネ科 | カモガヤ、オオアワガエリ |
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キク科 | ブタクサ |
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ヨモギ |
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食物アレルギー診療ガイドライン
2021より一部改変
原因食物を摂取した直後から30分以内に口から喉にかけての掻痒感や閉塞感などを感じます。基本的には局所の症状にとどまりますが、時に皮膚症状や呼吸器症状、消化器症状、さらにアナフィラキシーにつながることもあります。カバノキ科花粉―豆乳、ヨモギ花粉―スパイスなどではアナフィラキシーにいたることが多いです。
症状がおこったときに摂取していたものを詳しく聞き、可能性の高いものに関して血液検査や皮膚のプリックテストを行います。
根本的な治療は現在のところ見つかっていません。生の野菜や果物で症状が出る場合でも、加熱したものや缶詰などでは症状が出ないことが多く、症状の出る生の野菜や果物は摂取を控えていただきます。
ラテックスに対するアレルギー患者の一部でバナナ、アボガド、クリなどの経口摂取で即時型症状を呈する疾患です。ラテックスアレルギーの30~50%に認められます。
原因食物を摂取した後に、皮膚症状、消化器症状、呼吸器症状、時としてアナフィラキシーに至ります。
症状が出た際に摂取したものを詳細に聴取し、食物とラテックスの感作の状況を血液検査や皮膚のプリックテストで確認します。ラテックスアレルギーの診断には、粗抗原のラテックスと併せて、Hev b 6.02に対する抗原特異的IgE抗体が有用です。
原因食物やその加工品の除去を行い、感作源となる天然ゴム製品の接触を避けることを指導します。
表3:ラテックスと交差反応しやすい食物
ハイリスク群 | アボガド、クリ、バナナ、キウイフルーツ |
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その他 | リンゴ、ニンジン、セロリ、メロン、ジャガイモ、トマト、イチジク、パパイヤ、メロン、マンゴ、パイナップル、モモなど |
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