大人の食物アレルギー
大人の食物アレルギー
食物アレルギーと聞くと小児期の疾患のように思われがちですが、世界的に成人の食物アレルギーが増加しています。小児期と違って多岐にわたる病型を取るのも成人の食物アレルギーの特徴です。
成人の食物アレルギーでも即時型食物アレルギーと同様にアナフィラキシーに至ることもあります。成人期にみられる食物アレルギーとしては下記のようなものがあります。
花粉に対してできた特異的IgE抗体が、花粉と交差抗原を示す野菜や果物に反応し、アレルギー症状をきたす疾患です。花粉症になっていることに気が付かない間に発症することもあります。この疾患の場合、多くは口腔内のアレルギー症状(口の中のかゆみ・違和感など)が主症状となりますが、カバノキ科(シラカンバ、ハンノキ)の花粉―豆乳、ヨモギ花粉―スパイス(せり科のセロリ、ニンジン、スパイス)はアナフィラキシーに及ぶ可能性もあります。またこのタイプの食物アレルギーは生の果物には症状が出るものの、加熱したものや缶詰などでは症状が出にくいといった特徴があります。
原因となる食品(小麦、甲殻類、果物など)を摂取し、安静にしていれば症状が出ないものの、摂取してから4時間以内に運動することによってアナフィラキシーが起こる疾患です。このタイプの食物アレルギーの診断の難しさは、同じ食品でも症状が出たり出なかったりすることがある点です。患者様の体調や睡眠状態、内服していた薬、アルコール摂取、月経などによって症状に差が生じます。
ラテックスアレルギーのある方が、ラテックスの抗原と交差性を示す果物(アボガド、バナナ、クリ、キウイフルーツなど)を摂取した際に皮膚、消化器、呼吸器の症状を呈し、時にアナフィラキシーショックになることがあります。
Pork-cat症候群は、獣肉アレルギーの一種で、ネコのアレルゲンに感作された後に、豚肉を摂取し、アレルギー症状を示す疾患です。豚肉だけではなく、牛肉やイノシシ肉でも症状を示すことがあります。
Bird-egg 症候群は、鳥の飼育者が、経皮的あるいは経気道的に鳥のアレルゲンに感作された後に鶏卵(特に卵黄)を摂取したときに、アレルギー症状を示し、アナフィラキシーショックに至る可能性のある疾患です。
マダニに刺されたことを介して、マダニの唾液などに含まれるα-Galに感作され、その後牛肉や豚肉を摂取した際に、遅発性(摂取してから2~6時間後)にアレルギー症状を示してくる病気です。Pork-cat 症候群との違いは、摂取してから症状が出るまでの時間です。Pork-cat 症候群はでは摂取後1~2時間程度で症状が出るのに対してα-Galによる獣肉アレルギーでは摂取後症状が出るまでに2~6時間かかります。
サーファーなどマリンスポーツ経験者がクラゲに刺され感作が成立した後に、納豆を摂取約半日後に蕁麻疹や呼吸困難、消化器症状が見られ、アナフィラキシーに至る疾患です。夕食に納豆を食べ翌朝にアナフィラキシーになった場合などはこの疾患を疑います。納豆のねばねば成分であるポリガンマグルタミン酸が主要なアレルゲンとなっています。ポリガンマグルタミン酸を含有する食品(かまぼこ、ドレッシング)、保存料、甘味料などでも同様の症状が見られます
成人の女性にみられることが多く、アイシャドウや口紅に含まれるコチニール色素に感作後に、コチニール色素を含む食品などを経口摂取した際に、アレルギー症状を示します。以前はカンパリの摂取での症例が多かったのですが、カンパリでのコチニール色素の使用が中止されてからは、報告例は減少しています。海外製のマカロンなどに含まれるコチニール色素で症状が出た症例が報告されています
自宅で常温で密封されずに保管されていたお好み焼き粉やホットケーキミックスに混入しているダニの経口摂取が原因でアレルギー症状をきたす疾患です。
成人の食物アレルギーも、小児と同じように摂取したものや症状を詳細にお聞きし、疑わしい食品を推定します。血液検査や食品を用いたprick to prickテストなどを実施し、原因食品の同定を進めます。
さらに詳しい検査や負荷試験が必要と判断した場合は済生会中津病院免疫・アレルギーセンターにご紹介させていただきます。