アトピー性皮膚炎治療の新時代~全身療法編2 JAK阻害薬~|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

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えびクリ通信

アトピー性皮膚炎治療の新時代~全身療法編2 JAK阻害薬~|えびしまこどもとアレルギーのクリニック|吹田市千里丘の小児科

子ども達にとって待ちに待った夏休みに入りました。連日の酷暑、確実に地球温暖化の影響ですね。外を少し歩くだけで汗が滝のように流れてきます。外に行かれる際は熱中症の対策をお忘れなくお願いします。

 

先日、京都で開催されている『やなせたかし展 人生はよろこばせごっこ』に行ってきました。今まで、やなせたかしさんと聞くとアンパンマンの作者としか浮かばなかったのですが、絵本作家としても知られており、『やさしいライオン』や『さよならジャンボ』が代表作だそうです。読んでみようと思い購入しました。苛酷な戦争体験、家族との別れを通して「なんのために生まれて、なにをして生きるのか」を問い続けたやなせさんの絵本作家としての原点の作品です。8月の絵本3冊はやなせたかし特集でいこうと思います。

 

さて、本日はアトピー性皮膚炎の新時代~全身療法編2 JAK阻害薬~です。

アトピー性皮膚炎ではIL-4IL-13IL-31などのタンパク質ががたくさん作られます。免疫を担当している細胞の受容体にそれらのタンパク質がくっつくと信号を伝えるためのタンパク質(JAK)を介して、「炎症を起こしなさい」や「かゆみを起こしなさい」という信号が免疫細胞の中にある“核”に伝えられます。細胞核に信号が伝わると、炎症やかゆみ

が起こり、さらに「炎症を起こしなさい」や「かゆみを起こしなさい」という情報を伝えるタンパク質が作られます。JAK阻害薬は、信号を伝える経 路の1つ である「JAK-STAT(ジャック・ スタット)経路」をブロックする ことで、タンパク質が受容体に くっついても炎症やかゆみを 引き起こす信号が細胞核に伝わ らないようにします。

JAK阻害薬には外用薬と内服薬があり、外用薬は以前に取り上げたコレクチム®軟膏という薬です。内服薬には以下の3つがあります。

製品名

オルミエント

リンヴォック

サイバインコ

一般名

バリシチニブ

ウパダシチニブ

アビロシチニブ

適応疾患

既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎

適応年齢

2歳以上

12歳以上

12歳以上

用法用量

成人 

1日1回4㎎ 皮膚の状態に応じて2㎎に減量可能

小児 30㎏以上

通常4㎎、2㎎への減量可能

30㎏未満

通常2㎎とし、患者の状態に応じて1㎎に減量

12歳以上かつ体重30㎏以上では1日1回15㎎

状態に応じて

30㎎の投与が可能

12歳以上かつ体重30㎏以上では1日1回100㎎

状態に応じて

200㎎の投与が可能

導入前検査

血液検査

レントゲン

血液検査

レントゲン

血液検査

レントゲン

 いずれもアトピー性皮膚炎の確定診断がされており、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(Ⅲ群以上)やタクロリムス軟膏による適切な治療が半年以上行われている人、また一定以上の重症度や皮膚病変面積を占める方が対象になります。

投与前には感染症や血球減少や肝機能腎機能障害などがないか血液検査と胸部レントゲンが必要となりますし、服用開始後も定期的な血液検査が必要となります。

副作用として上気道感染や気管支炎、悪心、腹痛、咳、毛包炎、ざ瘡(ニキビ)、頭痛、発熱、疲労感などが報告されています。また、重大な副作用として、重篤な感染症、消化管穿孔、肝機能障害、間質性肺炎、重篤な過敏症などが報告されています。

 

数名の患者さんにこのJAK阻害薬を処方させていただきました。あくまでも私の私見ですが、内服を開始して早いお子さんであれば翌日からアトピー性皮膚炎の特有のかゆみはなくなります。しかし、かゆみがなくなったことで外用薬の塗布を怠ると、湿疹や痒みは戻ってきます。また湿疹や痒みは良くなりますが、皮膚をもちもちにする効果は、生物学的製剤の方が優れて言うように思います

 

前回説明した生物学的製剤(デュピクセント®、イブグリース®)とJAK阻害薬をどう使い分けるか、考えました。

 

 

生物学的製剤

JAK阻害薬

長所

安全性が高い

大きな副作用がない

導入前、導入後の血液検査は不要

皮膚のもちもち感が得られやすい

かゆみに対する即効性が高い

簡便である

投与の中断や再投与、選択する薬剤によって減量や増量が可能

短所

注射製剤であること

減量、増量ができない

導入前、導入後の血液検査が必要

高齢者や悪性腫瘍などの基礎疾患のある人には使いにくい

帯状疱疹やカポジ水痘様発疹などの皮膚感染症を繰り返している人には使用しづらい

 

それぞれの薬の長所、短所から、私見として

■生物学的製剤がおすすめの方

安全性を重視したい方

毎日の服用を続けることに負担を感じる方

皮膚のもちもち感を得たい方

JAK阻害薬の副作用で継続が困難な方、基礎疾患のある方、高齢者

 

■JAK阻害薬がおすすめの方

受験生などで、最短でかゆみや皮疹を良くしたい方

注射が嫌いな方

短期間の治療強化を希望される方

 

と考えています。今後症例数が増えると考えは変わるかもしれません、現在まで経験している数すくない症例から得た現時点での考えです。

 

受験生で、受験が差し迫っており、とにかくいったん良くしたいという重症なアトピー性皮膚炎の方には、JAK阻害薬で開始して、受験が終了後は、生物学的製剤でじっくりと治療を行う、そんな方法も考えられます。

 

生物学的製剤でJAK阻害薬でも、必ず行ってほしいこと、

それはステロイド外用薬などの抗炎症治療や保湿剤の塗布などの外用治療を継続することです。これらを怠るとどちらの製剤を使用していても、湿疹が全くない、すべすべの皮膚を目指すことはできません。

 

アトピー性皮膚炎は外用薬の治療が一番大切、最近このことを改めて実感しています。

 

ここ最近の酷暑で、汗をかき、皮膚を掻いてしまい、アトピー性皮膚炎が悪化してしまったという患者さんも多くおられます。汗にはかゆみを引き起こす成分がありますので、汗をかいたら早めにシャワーで流し、その後の保湿剤の塗布をお忘れなく。

 

充実した夏休みをお過ごしくださいね。

 

最後に

七夕の時に皆さんに書いていただいた短冊は、山田伊射奈岐神社でお焚き上げしていただきました。皆さんの願い事が叶いますように。沢山の方にご参加いただきました。ありがとうございました。

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