今年は例年以上に暑くなるのが早く、すでに30℃を超える日もあります。暑さに体が慣れていないこの時期は体調を崩しやすいため、十分注意してくださいね。
吹田市内の小学校では、まもなくプール学習が始まります。
アトピー性皮膚炎のお子さんでは、プール後に皮膚症状が悪化することがあります。これは、消毒に使われる塩素が皮膚への刺激となり、かゆみや乾燥を引き起こすためです。
プール後はシャワーでしっかり塩素を洗い流し、可能であれば保湿剤を塗ることで悪化予防につながります。
本日は、アトピー性皮膚炎の治療薬として使用している生物学的製剤「デュピクセント(一般名:デュピルマブ)」について、実際に使用してみて感じることをお話しようと思います
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、
- ステロイド外用薬などによる炎症のコントロール
- 保湿による皮膚バリア機能の維持
です。
多くのお子さんは適切な外用治療によって良好な状態を維持できます。しかし、中には十分な治療を続けても湿疹やかゆみが改善しない重症の患者さんもおられます。
こうした患者さんに対して、近年新たな選択肢として登場したのが生物学的製剤「デュピクセント(一般名:デュピルマブ)」です。
アレルギーの炎症を“静かにする”薬です
アトピー性皮膚炎では、皮膚の中で「かゆみ」や「炎症」を起こす信号が過剰に出ています。
特に中心になっているのが、「IL-4(アイエルフォー)」と「IL-13(アイエルサーティーン)」という物質です。
少し難しい名前ですが、イメージとしては、
- 「かゆくなれ!」
- 「炎症を続けろ!」
- 「皮膚のバリアを弱くしよう!」
という指令を出している“アレルギーのスイッチ”のような存在です。
デュピクセントは、このスイッチの働きをブロックすることで、アレルギーによる炎症を落ち着かせます。デュピクセントによって炎症そのものが落ち着くことで、かゆみが減り、結果として掻破行動も減っていきます。
実際に使って感じたこと(当院での経験から)
現在、当院でデュピクセントを使用している患者さんが数名おられます。
いずれも、強いかゆみや湿疹が続いていた重症のアトピー性皮膚炎のお子さんです。
その中の4歳のお子さんは、アトピー性皮膚炎に加えて「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」という、強いかゆみを伴う皮膚症状もありました。これまで、比較的強めのステロイド外用薬(2群)をしっかり使用していましたが、なかなか改善せず、かゆみも強い状態が続いていました。
そこでデュピクセントを開始したところ、それまで無意識に湿疹へ手が伸びていたのですが、その行動自体が明らかに減り、「ほとんど掻かなくなった」とお母さんも驚かれていました。湿疹も目に見えて改善し、赤みやゴツゴツした皮膚も徐々に落ち着いていきました。もちろん、注射のお薬なので、接種のときは痛みもあり、お子さんは嫌がります。
ですが、
- 夜ぐっすり眠れるようになった
- 掻き壊しが減った
- 皮膚がきれいになってきた
など、日常生活の変化を実感されるご家族は多いように感じます。
何より、皮膚が改善していくことで、お子さん本人の表情が明るくなり、それを見てお母さんもうれしそうにされている姿がとても印象的でした。
ネモリズマブとデュピクセントの違い(私見)
最近は、アトピー性皮膚炎に対する治療薬の選択肢が増えてきました。主に小児で使用できる薬は「ネモリズマブ」と「デュピクセント」ですが、実際に診療していると、少し得意なタイプが違うように感じています。
ネモリズマブは、「かゆみ」に非常に強く作用する印象があります。
そのため、
- 見た目の湿疹や赤みはある程度落ち着いている
- ステロイド外用薬で炎症自体はコントロールできている
- それでも無意識にずっと掻いてしまう
- “掻くクセ”が止まらない
- 夜間の掻破が強い
といった患者さんで効果を感じやすい印象があります。6歳以上のお子さんが接種対象となります。かゆみの神経回路”を落ち着かせることで掻破行動が減り、その結果として湿疹の改善にもつながる印象があります
一方、デュピクセントは、
- ステロイド外用薬を適切に使用している
- スキンケアも頑張っている
- それでも湿疹が広がる
- 赤みやゴツゴツした皮膚が改善しない
- 炎症そのものが強い
という、「湿疹のコントロール自体が難しい患者さん」で力を発揮する印象があります。生後6か月以上のお子さんが対象となります。
実際に使用していると、「まず炎症が落ち着き、それに伴ってかゆみも減る」という変化を感じることが多いです。
おわりに
重症のアトピー性皮膚炎は、単に「皮膚の病気」ではありません。
強いかゆみによる睡眠不足、繰り返す掻き壊し、スキンケアの負担など、お子さん本人だけでなく、ご家族の日常生活にも大きな影響を与えます。
近年はデュピクセントやネモリズマブといった新しい治療薬の登場により、これまで十分なコントロールが難しかったお子さんにも改善が期待できるようになりました。
もちろん、どの治療が適しているかは患者さん一人ひとりで異なります。
当院では皮膚の状態だけでなく、
- かゆみの程度
- 睡眠への影響
- 日常生活の困りごと
- ご家族の負担
なども含めて総合的に評価し、治療方針をご提案しています。
「しっかり塗り薬を使っているのに良くならない」
「夜もかゆくて眠れない」
「いつも掻いていてつらそう」
そんなお悩みがありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
お子さんとご家族が少しでも快適な毎日を過ごせるよう、一緒に治療を考えていきたいと思います。生物学的製剤は決してすべての患者さんに必要な治療ではありませんが、これまで十分な改善が得られなかったお子さんにとって、新たな選択肢となる可能性があります。

